根子フェス

 あれから2週間。数時間の中で遭遇した幾つものシーンが、閃光のようにフラッシュバックする。トンネルは真っ直ぐな一本道なのに、出口のない道を遊歩するかのようだった。寒さで感覚が鈍ってきたのか研ぎ澄まされたのか。音が速さをもって身体中を駆け巡る。鉛色の音叉になったかのように、音に身体が反応し、震えるような感覚。  600mの旅の終着点。七尾旅人が目の前にいた。耳をつんざくようなノイズ、優しく囁きかける声。アスファルトの灰色と、ライトのオレンジ色の二色の中に、ぽとん、と落とされた絵具のように、音は波紋のように広がった。ひとつの頂あるいは極致が、確かにあの場所にはあった。私たちはそこに連れていってもらったんだと思う。

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