誰かが見てる エトセトラ飛ぶ




まだ薄暗く、外気はひやりとしている。
遠くから、次第に空が白み始める。


ついつい飲み過ぎて、始発に乗る朝。
終電間際に歩く雑踏で、周囲のノイズが一瞬聞こえなくなるとき。

今はそんなことも減ったけれども、確かな感覚は今も残っている。

でも、あの頃、あの時、私が感じていたものは、数年経った今も言葉にはできない。
熱を帯びた頬に当たる外気は、痛みを伴うような冷ややかなものではなかった。
かと言って、心地よさがあったわけでもない。


じゃあ何を感じていたの?


ただ其処には、置いてけぼりになった「自分」と対峙する瞬間があった。
「自分」は泣いてはいない。ただ立ち尽くし、ぼうっとどこかを見ている。
空っぽな心にはさぁさぁと風が流れているようだった。


あの時、感じていたものは、今はもう取り戻せないかもしれない。
時々、あの時に見えた「自分」を思い出すと、心がじゅんと音を立てる。
思い出す感覚は甘くもないし、辛くもない。

立ち尽くした「自分」は、今、何処にいるんだろうか。

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