歓び迎え入れること

マリンバソロでのライブなんて初めてだなぁ。


なんて思いながら、隣り合う鹿角市の「道の駅おおゆ」で開催された演奏会に足を運んだライブ。しかし冬の北国はひとの行動に制約を課す。往路が風雪により、悪路と言っても差し支えないほど荒れていた。止むを得ず二部からの入場。

二部で聴いたなかでは、聴覚を失ったマリンバ奏者Evelyn Elizabeth Ann Glennieの手による“Light in Darkness”が印象的だった。暗闇のなか、炎みたいに揺らめく光。溢れ落ちるようなマリンバの音を聴いていると、そんな景色が目に浮かんだ。聴覚と反比例して、過敏になった視覚が光のかたちを見つけたのかなと、異国の女性奏者に思いを馳せてみる。


ライブで一番印象的だったのは、主催の女性Hさんのはにかみ、でもきらきらした表情。先日職場に取材に来た、学校の新聞部に所属する10代の高校生のようだった。Hさんと学生の表情の違いは、ためらいがなく、真っ直ぐ前を、次を見据えていること。


Hさんとは自身が営むカフェで、イベント企画について話したことがあった。

マリンバ奏者の方がここで演奏してくださったんですよ。またやりたいと思っているので、機会があればぜひ来て下さいね。

半年後ようやく、それが叶った。場所はカフェではなく、まちが新たに迎え入れた大きな会場で。


歓待という言葉がある。
演奏会場を提供した男性は、聴衆にこう語った。
「この場所が喜んでいる」

ああ、そうだよな。
演奏のなか、空間がぴりぴりと震えていた。
この場所は音を待っていたのかもしれない。
このまちは場所に新しい可能性を吹き込むHさんを待っていたのかもしれない。

歓び、迎え入れる。

Hさんの姿勢や言動にも、それを感じたことが多いな、とふと思う。

ひととひと、ひとと音、ひとと場所、ひととまち……
交わり合うことの歓びに気づかされた夜だった。
いつか見た雪。秋田県鹿角市と岩手県八幡平市の境目あたりで。

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