令和 を読む

天平二年の正月の十三日に、師老の宅に萃まりて、宴会を申ぶ。時に、初春の令月にして、気淑く風和ぐ。梅は鏡前の粉を披く、蘭は珮後の香を薫す。しかのみにあらず、曙の嶺に雲移り、松は羅を掛けて蓋を傾く、夕の岫に霧結び、鳥はうすものに封ぢらえて林に迷ふ。庭には舞ふ新蝶あり、空には帰る故雁り。
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あたらしい春、あたらしい日。あたらしい命を迎え入れる。すぅっと吸い込むと胸がじんわりと暖かくなるような、さわやかな風が私のほおを撫ぜる。つい先日ほころんだ梅花はまるで白粉のよう。鏡の前で母が叩いた、あの白粉。蘭の香りは彼女が持っていた香袋を思い出させる。ああ、明けの明星が輝く頃には、雲の流れ道が見える。宵の明星が輝く頃にはむせるような霧。松を湿り気のなかに封じ込める。霧の帳の向こう、鳥達の翼が交わり、離れる。その繰り返し。家の庭に出ると、あたらしい命が行き交うのが見える。この蝶は羽化したばかり。あの雁は秋冬を告げた雁だろう。

あたらしい命が吹き込まれる。
命が孕む調べはどんなもの?

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